この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


永瀬邸に着くと、私はいつものように裏口へまわり、声をかける。

するとくら子さまが、すぐに出てきて下さった。



いつものように、母さまから預かったお野菜をお渡しすると、



「いつもありがとう。とき子さまにも、お心遣い感謝いたしますとよろしく伝えて下さいね」



そう優しく微笑みかけて下さる。



………くら子さまは気丈なお方ですから、当たり前でしょうが、私みたいな子供に対してけして弱音を吐いたりいたしません。



いつもお屋敷へ伺うと、変わらぬ態度で接してくれます。



そんなお母上さまを見ているからでしょうか、さき子さまも不安な表情を一切見せず、私に笑いかけて下さいます。



けれどそんなおふたりの心中を察すると、せつなさで胸が張り裂けそうになるのです。



本当は私が、明るく笑って励まさなければならないのに。



母さまに叱られても、やはり私は、笑えないままでした。



< 246 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop