この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


ふいに、音が鳴りだした。

出立の行進が始まったのだ。



今まで聞いたことのない音だった。
笛でも、太鼓の音でもない。



けれど その音に合わせて、白虎隊士らしき少年兵らが肩に銃を掛けて、兄さまと同じような黒い詰め襟姿で現れた。


隊列を組んで足並みを揃えて行進してくるその光景に、私は急いで利勝さまや兄さまの姿を探す。



けれど どこにも見当たらない。



後になって、最前列にいたのは士中一番隊なのだと気づいた。



その中の隊士のひとりが、金色に光る不思議な物を手に持ち、それを口にあて、しきりと吹いている。



さっきから聞こえる音は、そこから発せられていた。



「あれは喇叭(ラッパ)というのですって」



くら子さまがそう教えて下さった。



士中一番隊が通り過ぎると、なぜだか周りでざわめきが起きる。



若殿さまが現れたのかと首をめぐらすと、見たことのない旗が目に入ってきた。



旗には『誠』の文字。



名前だけなら、私も聞いたことがある。



『誠』の旗を掲げる隊といえば。



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