この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


私の視線に気づいて、ご婦人がこちらを振り向いた。
知らない娘にじっと見つめられ、戸惑いながらも微笑を滲ませる。

不躾(ぶしつけ)にまじまじと見てしまったことに私は焦った。



「あっ……!も、申し訳ございません!あの、今しがた“悌次郎”と聞こえたものですから、もしや白虎士中二番隊の伊東悌次郎さまのことではと思いまして……!」


「まあ……あなた、悌次郎のお知り合い?」



そのご婦人は驚いて目を丸くした。

私は苦笑してしまう。



「知り合いとまでは……。けれど私の兄のところへも、何度か遊びに来て下さったものですから。

私の兄は林八十治と申しまして、悌次郎さまと同じ白虎士中二番隊に配属されました。私は妹のゆきと申します」



名乗ってからお辞儀をすると、



「まあ、そうでしたの」



ご婦人は得心したように目を細め、その表情を柔らかく崩した。


< 266 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop