この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
ご婦人はすみ子さまとおっしゃった。
悌次郎さまのお母上さま。
私達は暑さを避けるように、境内の中の大きな松の木陰に移り、少しお話をいたしました。
「あの、お伺いしてもよろしゅうございますか」
私の問いかけに、すみ子さまは柔らかく笑って頷く。
「……悌次郎さまは、なにゆえ白虎隊にご入隊できたのでしょうか。
あの、兄から、悌次郎さまは安政元年の生まれだから、入隊できなくて残念だったと伺っておりましたものですから……」
「ああ、そのこと」と、すみ子さまは笑った。
「生まれが一年遅かったというだけで、白虎隊に入れなかったことが、あの子はよほど口惜しかったのでしょうね。
親しくしている茂太郎さんは入隊できたのに。自分だけが取り残された心持ちになったのね」
(茂太郎……。井深さまのことね)
そういえば、お見かけする時は、いつもご一緒だった。
「自分も十六歳だと偽って志願すると言い出して。
あの子の父は、藩を欺くことはできぬと承知しなかったのだけれど」
すみ子さまは、ふう、とため息まじりの苦笑を落として、
「でもね、あの子があまりにも熱心なものだから、とうとう折れてしまって。
隊長の日向さまにご相談したところ、生年月日の正誤表を提出するならと、入隊を許してもらえたの」
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