この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


「さようでございましたか……」



そう答えるしかできない。
自然と俯いてしまう。



利勝さまが、兄さまが、あともう一年遅く生まれていたならば。

私はどれだけそう思ったことか。

どれだけ悌次郎さまを(うらや)んだか。



(そう思ってしまうのは、私が女子だから?)



男子なら。

もし利勝さまや兄さまが、悌次郎さまと同じお立場だったら。



やはり皆に遅れをとったと口惜しがって、きっと同じことをしていた気がする。



それは『忠義』のため?

それともこの『国難』に、ご自分もお役に立ちたいと強く願うから?



そのためなら、ご自分のお命など捨ててもかまわないと、一途にそう思っているの?



それだけ、女子と男子では、考え方が違うのですね………。



「……強いのですね。男子というのは。『忠義』のためなら、惜しみなくそのお命を捧げることができるのですから」



私が俯いたままつぶやくと、すみ子さまはまたやさしく目を細めた。



すみ子さまは、上品な雰囲気をもつお方だった。


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