この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
すみ子さまは、優しく語って下さった。
「そうね。『忠義』はとても大切なことね。
特にあの子達は、日新館でそれを強く叩き込まれてきたのだから。
けれどそれだけで、人は強くなったりしないわ」
私は俯いていた顔をあげて、すみ子さまを見つめる。
その視線を受け止めて、すみ子さまは優しく微笑んだ。
「殿方も最初から強いわけではないのよ。
強さは力だけじゃない。心の強さも必要なの。
人が強くなりたいと願うのは、守るべき何かを見つけた時よ。
そのためなら、人の心は強くなれる。そうすれば人は力を奮い起こせるの。
そしてそれは殿方だけでなく、女子にも等しく言えることよ」
「守るべき 何か……?」
すみ子さまは強く頷いた。
「あの子達もきっとそう。若いながらもそれがあるから、強くあろうと、お役に立とうと望むの」
そうおっしゃって、すみ子さまはおもむろに空を見上げる。
「私が守りたいものは、そんな悌次郎の気持ち。
この国難のために、自分もお役に立ちたいと強く願うあの子の気持ち。
あの子が自分で選び取った道ならば。たとえそれが、あの子を失う結果になったとしても。
出陣の際に見せた、あの輝きに満ちた顔を思い出して、私はきっと後悔することはないでしょう」
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