この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


お諏方さまにお祈りした願いは、すみ子さまの仰せの通り、それから何日も経たないうちに叶いました。



その日は諏方神社の夏祭りがあり、神社のほうからはにぎやかな音が響いてきます。



「おふたりが早く帰ってきますように」



そう願いを込め、お諏方さまのお参りもすませて、もう陽も暮れかけそうな頃。





「奥さま!お嬢さま!八十治さまがお戻りになられましたよ!」



玄関のほうから、朔じぃのしゃがれた大声が聞こえたあと、待ち侘びていた声が続いた。



「ただいま戻りました!」



待ち遠しかった、兄さまの元気な声。



母さまは急いで玄関へと向かう。
私もあわててそのあとを追った。



玄関に立っていた兄さまは、出立の時よりまたいっそう日に焼けたお顔で、それでも変わらぬ笑顔を見せておられました。



「兄さま……!お戻りなさいませ!!」



私が駆け寄るより先に、母さまが兄さまを抱きしめる。



「……継母上?」



照れくさそうに戸惑う兄さまに、母さまは抱きついたまま、どこぞにケガでもしていないか、身体のあちこちに触れて確認する。



兄さまは苦笑された。



「大丈夫です、継母上。どこも異常はありません」



言われて見上げる母さまの目は、かすかに潤んでいて。

それでも母さまは、笑っておっしゃった。



「ああ……無事でよかった!お帰りなさい、八十治さん」


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