この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


そばにあった下駄を足に引っかけ、急いで表に出る。



夕焼けの名残りの橙色と、月とともに東から染めてゆく藍色の空の下で。



玄関からほど近い門の内側に、待ち望んだ愛おしい姿が目に映る。



「利勝さま……っ!!」



利勝さまは、やっぱりいつもと変わらぬ不機嫌そうなお顔をして、こちらをちらりと見るとすぐそっぽを向いた。



明日にでもご挨拶に伺おうと思っていたのに。
利勝さまのほうから、こちらにいらしていただけるなんて。



嬉しさのあまり、利勝さまのすぐ目の前まで近づいてゆく。
暗がりのなか、そのお顔をよく拝見したくて。



「……お戻りなさいませ!お勤めご苦労さまでございました。おケガもなく、ご無事で何よりです」


「……ああ」



利勝さまはそっぽを向いたまま、唸るように返事を返す。

そんなお姿に、思わず目を細めた。



いいの。そんなところも大好きだから。




< 273 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop