この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


自然と笑顔になれた。
嬉しくて嬉しくてたまらない。


よかった。


どこにもおケガをされてない。
元気なそのお姿を見せてもらえただけで。



「本当によろしゅうございました。おケガひとつなく、ご無事なお姿で戻られて」


「……大げさなんだよ。戦場に出たわけじゃない。無事なのは当たり前だ」



利勝さまは、戦場に出れなかったことが口惜しいとばかりに口を尖らす。



その仕草さえ、愛おしくてたまらない。



「はい、それでも。それでも、利勝さまのご無事なお姿を見られただけで嬉しいのです。
こちらに寄っていただき、まことにありがとうございました」



笑顔でお礼を述べると、利勝さまはあわてたように声を荒らげる。



「べっ……別にっ!お前に会いに来た訳じゃないぞ!

帰るついでに、八十に本を貸してもらおうと思って!それで寄っただけだ!」



大声を出されても、私の表情は変わらない。



「はい、わかっております。ですが、それでもうれしいのです。

くら子さまにご無事なお姿をお見せする前に、私にそのお姿をお見せしていただけたことが」



うれしくて、嬉しくて。



私は笑顔のまま、またいつもの調子で言ってしまった。



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