この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


利勝さまはポカンと口を開けたあと、ハッと我に返って憮然とした。



「……お前な……」



暗がりのなか、玄関に掲げる提灯の灯りに照らされたその頬が、赤く感じた。

それを見て気づく。



(―――あ……っ。しまった!こういうことは、もう言わないでくれと言われていたんだった!)



私も。ご迷惑になるなら、この気持ちを消してしまおうと思っていたのに。



けれど。やっぱり ダメ。

溢れてしまうこの想いを、消すことなんてできやしない。



でも、利勝さまのご迷惑になるのだから、せめて心の中だけでひっそりと想わなきゃ……。



「……あのっ!申し訳ございません!このようなことは二度と言うなと申されたしたのに、私ったらつい……!

あの、次からは気をつけますから……!」



焦ってお詫びすると、利勝さまは苦いお顔のまま、ため息をつかれた。



「……まったく。お前ってやつは……」



呆れたような、困ったような、苦笑い。



けれども怒っていない様子が見てとれて、私もまた 笑ってしまった。


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