この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


やっぱり 好き。利勝さまが 大好き。



すみ子さまと同じ。



私も 守りたい。



あなたの気持ちを。あなたの願いを。





(―――私も、強くなれるかしら?)



利勝さまが、無事 本懐を遂げたなら。



ご自身が望むように、兄上さまの仇を取り、主君のためにそのお命を捧げることができたなら。



私も、それを喜ぼう。

そして私も、それにならおう。



決めたの。



あなたが『忠義』に殉じるのなら。

私は、この『恋』に殉じるから。






「―――そういえば、お諏方さまにはもう参拝してきたか?」



利勝さまが普通に話しかけて下さるから、私も自然とお答えすることができる。



「はい。夕刻前に」


「そうか。俺も八十と帰り際に済ませてきた」



そうしてほぐれた空気の中に、兄さまが書物を持って玄関から現れた。



「ほら雄治、持ってきたぞ。これでいいんだろ」


「ああ。悪いな」



利勝さまは兄さまから書物を受け取ると、すぐに門を出てゆく。



「あ……利勝さま!お気をつけて!今夜はゆっくり休んで下さいましね!」



声をかけると、振り向いた利勝さまは、目を細めて短く頷いてくれた。



そのかすかな笑顔が、私の心に、またあたたかく灯った。


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