この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


初陣から戻ってこられた兄さまは、初めての経験ばかりで興奮されておられるのか、

夕飯の時でさえ、初陣のさなかに見聞きしたことを、私と母さまに語って聞かせて下さいました。



「ですから継母上!本当にすごいお方なのですよ、土方さまは!

ああ、父上が居られたらなぁ!土方さまのお話を聞いていただけたのに!」



兄さまは頬を紅潮させながらおっしゃる。



「そうですね」



私は苦笑い。

たしかにお父上さまが居られたら、存分に熱弁をふるえたでしょうに。



お伺いした話によると、白虎隊の宿舎のとなりに土方さまの宿舎があって、第一線で闘ってこられた土方さまのお話を連夜拝聴できたとか。



兄さまや利勝さま、ほかの隊士の皆さまにとっては、かけがえのない時間となったことでしょう。



泊まりがけの外出や、実戦経験者のお話。



なにもかもが初めての経験だった兄さまは、まるで物見遊山から帰ってきたような面持ちで、瞳を輝かせて語り続ける。



母さまはにこにこ笑って聞いておられるけど、不安で連日眠れぬ夜を過ごしていた私は、なんだか拍子抜けしてしまった。


< 277 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop