この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


………けれど、まあいいか。


兄さまがあんなに楽しそうなんですもの。



まるで戦争とは無縁な笑顔。



今頃 利勝さまも、同じようにその瞳を輝かせて、くら子さまやさき子さまにご自身が体験なされたことを語っておられるのかしら?



そんな利勝さまの生き生きしたお顔を想像すると、自然と頬が緩んでしまう。



「若殿さまが急ぎお戻りになられたのは、白河口とは反対側の越後口の戦局が危うくなってきたからなのです。

土方さまは そのまま母成峠(ぼなりとうげ)の守備へ向かわれました。

我われも、どれだけ土方さまと一緒に戦場へ出向きたかったことか」



兄さまは残念そうにおっしゃった。





――――会津の国境はあまりにも広すぎて、我が藩は兵力を分散せざるを得ませんでした。



すでに朱雀隊などの精鋭部隊は、すべて国境へ出払ってしまい、あらかじめ募っておいた商兵・農兵などを兵の補填として援軍に向かわせるほどなのだとか。



それなのに、まだ自分達には戦地への出動命令が出ない。

それが口惜しいと兄さまはつぶやく。





………私はそれを見ると、ズキンと胸が痛むも、心のどこかでホッとするのでした。


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