この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
まつは、私が林の家に来る前から、ここで下働きをしている女の子。
なんでも、お父上さまが親しくしていた農家の娘らしい。
花嫁修業なのか口減らしのためなのか、詳しいことはわからないけれど、お父上さまが預って、この家には七つの頃からいるらしい。
歳は 兄さまより、四つ上の十四歳。
つまりまつは、自宅で暮らしていた分と同じだけ、この林の家に住んでいることになる。
………まつは 偉いと思う。
私だったら、親と離れて知らない家で、ひとり暮らしていくなんてとてもできない。
だからかしら?
まつはとてもがんばり屋でしっかり者。
いつも笑顔を絶やさない優しい人。
兄さまが、まつを姉のように頼りにしてるのを見て、私も自然とそれにならい、まつを同じように慕っていた。
「ゆきさまの良いところは、人の言うことを素直に聞き入れるところですね。
こんな下働きの者にまで、わざわざ謝る必要なんてございませんのに」
苦笑して言うまつに、兄さまはそのお顔をしかめた。