この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「ありがとうございます!兄さま!」
やったとばかりに笑顔になって、さっさと自分の布団を敷くと、障子を閉めてすぐ横たわる。
兄さまは再び文机に向かい筆を進めておられるけど、後ろ姿でも そのお耳が真っ赤なのが見てとれて、なんだか可笑しい。
笑いをこらえていると、「聞こえてるぞ」と兄さまの不機嫌な声。
「すっ、すみません!」とあわてて口元を引き締める私を無視して、筆を置くと、兄さまもごろりと横になった。
「明かり 消すぞ」
「はいっ。おやすみなさいませ!」
行灯の明かりを吹き消されると、今夜は月が出ていないのか、辺りは闇に包まれた。
途端に不安になる。
となりに兄さまがおられるはずなのに。
「……兄さま……?」
目が慣れてくると、こちらに背を向け横たわる兄さまの輪郭がぼんやりと浮かび上がった。
背を向けられたことにも、怒らせたのかと不安になる。
「……兄さま。手をつないでもよろしいですか……?」
不安な闇が怖くて。
私はまた甘えて、手を伸ばすと兄さまのそれを探す。
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