この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


「では継母上、私は部屋に戻ります」



私が来たから話を打ち切ったというように、兄さまは母さまに頭を下げて立ち上がると、私の脇をスッと通り過ぎてゆく。



「あ……兄さま?待って下さい!」



何か不穏な空気を感じて、私は兄さまの背中と母さまのお顔を交互に見たすえ、やっぱり兄さまの背中を追うことにした。



「兄さま!」



姿を追いながら兄さまのお部屋に私も入ると、その背中に問う。



「何かあったのですか?私には話せないことなのですか?」


「そんなことはないさ」



兄さまはいつもと変わらぬ態度でこちらを振り向く。


その口元には笑みさえ浮かべている。



「俺達 士中二番隊は、今日、軍事奉行・萱野(かやの) 権兵衛(ごんべえ)さまに嘆願書を提出した」


「嘆願書……?」


「ああ。“某等(それがしら)、向かうところの方面()えて自ら選ばず、ただただ君命 これ待つのみ。
しかれども敵兵の最も多きところ、敵情の最も集まるところ痛望の至りに堪えず”―――とな」


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