この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「まつはいつも、ゆきに甘すぎるぞ。身分に違いはあれど、まつは年上なのだから。
それに 心配をかけたのだから、謝るのは当然のことだ」
そう非難するけれど、まつも負けじと言い返す。
「あら!ゆきさまに一番甘いのは、八十治さまですよ?それを棚に上げるなんて、男らしくありませんわ」
にっこり笑うまつに兄さまも勝てないようで、ふてくされながらご飯を乱暴にお口の中に詰め込まれる。
………こんなとき、壁を感じてしまう。
兄さまとまつのあいだの親しさに、追いつけない気がして。
うつむいたまま、いつまでも膳に箸をつけない私を心配して、まつが言った。
「八十治さま。いい加減、お許しになってあげて下さいな。これではゆきさまがお可哀想です」
軽く睨みつけるまつに、「……わかった」と、まだいくらか不機嫌そうな声だけれども、兄さまはようやく頷いてくれた。