この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
けれども自嘲するかのようにふっと笑いを漏らすと、利勝さまは続けた。
「だが俺は、やはり未熟者だ。どうせ何もしてやれないのだからと突っぱねたが、切り捨ててしまおうと思えば思うほど、うまくいかなくなる」
私に話して聞かせるというよりも、
まとまりきらぬご自身の想いを、形に表そうとしているかのような、
そんな口ぶり。
私は黙ったまま。
利勝さまが何をおっしゃりたいのか、期待と不安を抑え込みながら、ひとことも聞き漏らさぬよう次の言葉を待つ。
「初陣だって、あれだけ待ち侘びていたはずなのに、ずっと気が晴れなくて。
なのに城下に戻って、いつも通りのお前の凝りない態度を見たら、そんなのはいつのまにかどこかへ消え失せてた。
……やっと、わかったんだ。
ああ、お前には何を言ってもムダなんだなって。
だったら、受け止めるのも突き放すのも、俺の度量次第なんじゃないかって」
空を仰いでいた利勝さまが、こちらを振り向く。
呆れた表情に、ふっ切れたような、観念したような色を滲ませて。
「言ってもムダだった」と言われて落ち込む私に、こうおっしゃってくれる。
「お前は今のままでいいんだよ。
そんなお前に、正直俺は救われてる。
どうせ限られた時間なら、このまま……今のままで、お前の笑顔を見せてくれ」
――――トクン、と胸が鳴る。
思わず利勝さまを見上げる。
(利勝さま……いいのですか?
こんな私の想いを、許してくださるのですか……?)
利勝さまの頬がまた、いつのまにか赤く染まっている。
けれどもそのお口から発せられた言葉は、とても力強いものだった。
「お前が言った通りだよ。
お前が笑っていてくれると、元気が湧いてくる。
全力を出せそうな気がする。
そうすれば俺も八十も、安心して戦に臨める」
「……本当 ですか……?」
「ああ。本当だ」
そう頷いて、利勝さまは少し照れくさそうに笑った。
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