この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「兄さま!私にまた草笛を吹いて下さい!」
新緑の初夏。庭のサツキも満開の頃。
庭で掃除をしていた私は、兄さまを見つけて今日も元気にお願いする。
早足で座敷を横切ろうとしていた兄さまは、少し困ったお顔をなされた。
「ゆき、すまない。今は相手をしてられない。
今日の『什』は、うちで集まるから」
そう 私に言いおいて、
「お継母上。皆が来たら、水をお願いしますね」
台所の母さまには、そう お願いをしている。
………ああ。またですか。
『什』。
会津で生まれた武士の子ならば、知らない者はいないでしょう。
『什』とは『十人の仲間』という意味。
それは各地域ごとに編成されていて、六歳になると、その子供達の組織に属するよう決められておりました。
八十治兄さまもやはり、六歳から九歳までの『遊びの什』に属していて、毎日その集会に出かけてゆくのです。
…………つまんない。