この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
利勝さまも慣れたもので、足の悪い私の歩調に合わせてゆっくりと足を進めてくださる。
その背中に導かれながら後に続いた。
辺りは夕闇。
空にはうっすら三日月が見える。
以前 手拭いを渡しにいった日は月明かりだけで十分だったけれど、さすがに今夜は利勝さまも提灯を携えている。
こうして何度、利勝さまに帰り道を送っていただいたことだろう。
初めて出会った時も、迷子の私を見かねて送ってくださった。
思えばあの時から、いつも心のどこかに利勝さまがいたような気がする。
(私の恋はきっとあの時から、すでに始まっていたんだわ……)
その背中を見つめながら、今までたどってきた恋の道を思い出して幸せに浸る。
『今のままのお前でいい』。
『お前の笑顔を見せてくれ』。
利勝さまが私に、そうおっしゃってくださった。
その言葉を思い出すだけで、頬が緩んでしまう。
それに初めて利勝さまと食事をともにしたけれど、あまりの豪快な食べっぷりに驚いてしまった。
兄さまはいつも落ち着いた所作で箸を運ぶから、考えたことなかったけど、皆そういうものなんだと勝手に思い込んでいた。
(でも 利勝さまらしい)
また宝物を見つけた喜びで、私の頬は緩みっぱなし。
そんな感じで利勝さまの背中ばかり見つめて、ろくに足元も見ずに歩いていたら、何かにつまづいて転びそうになった。
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