この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
とっさに、周囲のどこかにいるだろう草色を探した。
だが、ゆうべのことを思い出して目を伏せる。
あれからなんだか気まずくて、見張りの交代の時以外は寝たふりを決め込み、自身の殻に閉じこもって、ただ夜が明けるのをひたすら待った。
明るくなっても、雄治は俺に近づいては来なかった。
ゆうべのことで、約束は反故になったか……。
隊士達は身をかがめながら、視界の悪い濃霧の中を銃声を頼りに前進し始める。
いつのまにか、俺だけ立ち止まっていたようだ。
「八十治どうした?早く行かないと出遅れるぞ」
後ろから来た俊彦が声をかける。
「……あ、ああ」
我に返って思い直した。
そうだ。どうせ戦闘になれば、お互いを思いやれる余裕などなくなる。
戦いの混乱の中で、雄治の行動を掌握してつねにそばにいるなど、最初からできるはずもない約束だったんだ。
俺は前方に進んでゆく隊士達の背の中に、もう一度だけ草色を探した。
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