この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
利勝さまが、来る――――。
それが本当かどうか、わからないけれど。
でも。
会いたくない。
そう言いながら、私……そわそわしてる。
午前中にしてしまわなければならない洗濯や掃除も、午後の裁縫や、大好きな手習いさえも。
何をしていても、私の心はうわの空。
(本当に来たら どうしよう)
そう考えただけで、私の心はドキドキ高鳴る。
私は自分でも知らず、兄さまのお帰りを待ち侘びていたのだと思う。
そして 夕方になって。
「ただいま戻りました!」
兄さまは帰ってこられた。――――おひとりで。
ドキドキしながら出迎えた私は、ポカンと口を開けてしまう。
「あ……兄さま。おひとりで お戻りですか……?」
つい そう尋ねてしまった私に、
「利勝を連れてくるな、と言ったのは、お前だろう?」
そう おっしゃって、兄さまは意地悪く笑った。
………なんだか、拍子抜けした気分。