この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


先頭はすでに濃霧に隠れて見えなくなっていた。



草色は見当たらない。



あいつのことだから、勇んで先頭にくっついて行ったのかもしれない。



つい ため息が漏れた。



「おい、八十治?」



肩に手を置く俊彦の声に促され、重い足を前に出そうとする。



その瞬間 後ろから、反対側の肩を強く叩かれた。



振り返った俺の視界に飛び込んできたのは―――草色。



「行くぞ八十!遅れるな!」




(―――雄治……!)




まっすぐ前だけを見つめながら雄治は強く言う。



その横顔が、なぜか目に焼きついた。



「………ああ!」



一歩、足を踏みしめる。
その足が軽くなったように思う。



不思議だ。



さっきまで重かった身体や心すべてが軽くなった気さえする。



身体中に力が湧いてくる。



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