この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


俺達は再び歩きだす。

ただただ、一路 城を目指して。



先頭には篠田どの。

その次を、野村どのに簗瀬どの、西川どのと続く。

そしてそのあとをはぐれてしまわないよう、俺達は進んでゆく。



俺のとなりには雄治。

前には井深と俊彦が、両脇から和助を抱えるようにして歩いている。



ふと 気づく。

そして後ろを確認してから、前を歩く井深に尋ねた。



「井深。悌次郎の姿が見えない。お前、一緒じゃなかったのか?」



多少 不安の色を浮かべてしまう。



けれども井深は、不安のかけらも見せずに穏やかに答えた。



「悌次郎は津田どのと一緒に、負傷した池上を助けて俺達のあとをついてきているはずだ。

あいつのことなら心配いらない。昔よくここらで遊んでいたから、道に詳しいはずだ」



前を向いたまま、断言するように強く言う。


あるいはそう己自身に言い聞かせているのかもしれない。



無事でいてほしいという願いと、あいつなら大丈夫だという強い信頼。



そんな井深の気持ちが、言葉から伝わってきた。






だが……この時すでに悌次郎や津田や池上が、山中で敵の銃弾に(たお)れていたことを、

俺達は知る由もなかった。




< 385 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop