この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
兄さまのお部屋は庭に面していて、日当たりもよく六畳の広さ。
いつもきちんと片付けられていて、目障りなものがないせいか、私の四畳半の部屋より、うんと広く感じる。
林の家を継ぐ、大事な嫡子ですもの。
いい部屋をあてがわれるのは当然のこと。
兄さまは文机の前に座り、持ち帰った風呂敷の結びを解いて、包まれていた書物を机の上に並べた。
それが済むと、後に続いて部屋の障子を閉めた私に向き直る。
そうして、のんびりとした風情で腕を組んだ。
「さて。何を話すか……」
「兄さま!はぐらかさないで下さい!!」
私が眉をつり上げると、兄さまは苦笑されて、
「わかったわかった。利勝のことだろう?
あいつとは組が違うんだ。だから聞いた話だけど、あいつは今日、掟に背いたことを自ら申し出たそうだ。
違反したとはいえ人助けだから、無念をたてるだけで済んだよ。だから安心しろ」
『無念をたてる』……。
一応 罰の中では、一番軽いとされる刑。
それでも、迷惑をかけたことに変わりない。