この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


脇目も振らず雄治のあとを追い、雑木林の中に身を投じる。

すると数十間先にある街道すじを下りてくる敵軍を認めた。

敵兵はこちらに気づいたようで、しきりと撃ってくる。


いくつもの銃声が響くなか、すかさず身を伏せ這うようにして雄治を探す。


銃弾は容赦なく降り注ぎ、すぐそばの木に当たって木っ端がはじけ飛んだ。



「負傷している者を先に連れて行け!! 使える銃を持つ者は
応戦するぞ!! 林を援護しろ!!」



背後で篠田どのの指示する声が聞こえる。

次いでこちらからも、頼りなさそうな銃声が次々にあがる。



俺はそのまま 雄治を探した。




(―――どこだ!? どこにいる!!? )




焦りに駆られながら辺りを見渡すと、杉の大木(たいぼく)の根元にうずくまる草色を見つけた。



「雄治っ!!!」



雄治に駆け寄り、同じように大木に身を隠すと、すぐさま身体を抱き起こす。

その手にヌルリと生温かい感触が伝った。



(………!!)



顔をあげた雄治は、痛みに耐えながら苦笑して声を漏らす。



「ぬかったな……やられた」



雄治は右腕と腰に銃弾を受けていた。

腕を押さえる雄治の手から、鮮血がみるみる溢れ出し、草色の軍服を赤く染めてゆく。



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