この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
ああ 弁天山
先程通った間道を引き返すかたちで、敵の銃声が遠のいたところまで来ると、負傷していた者達が、不安な面持ちで仲間が戻ってくるのを待っていた。
「……永瀬っ!!」
和助を助けて先に来ていた井深と俊彦が、雄治のその姿に驚いて駆け寄ってくる。
皆 負傷した雄治の姿に、表情を曇らせた。
俺と簗瀬どのは、近くの木の根元に寄りかからせるようにして雄治の身体を下ろす。
腰に受けた傷は出血がひどく、すでに袴の半分を赤く染めていた。
出血がひどいせいで、その顔も血の気がひいて青白く歪んでいる。
重傷なのは、誰の目にも明らかだった。
俺は自分の腰に巻いていた晒しを半分くらいほどいて小刀で切った。
それを雄治の腰の傷に手拭いを当てた上からきつく巻いてゆく。
応急手当にもならない。瑣末な処置だった。
それでも、何かせずにはいられなかった。
きつく縛られた痛みで雄治は呻くと、かたく閉じていた目をうっすら開けた。
「八十……」
俺を見ると、無事な姿に安心したのか、雄治は弱く笑う。
「雄治しっかりしろ!城までもうすぐなんだぞ!今くたばってどうする!
城に戻って、もうひと働きするんだろう!? おい、雄治!!」
雄治は応えない。
荒い息だけが、つらそうに口から漏れてくる。
それが余計に不安にさせた。
「……何やってんだよっ!! あわてて飛び出すやつがあるか!!
せっかくの草色が台なしじゃないか!! 馬鹿やろう……っ!!」
くやしくて、腹が立って。
ひどく興奮して、泣き声をあげていた。
そんな俺に驚いて、雄治は歪んだ顔を和らげ苦笑する。
.