この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


何とか敵兵を(しの)いだ篠田どのや野村どの、他の隊士達が戻ってくる。


負傷した者もいるが、どうやら皆 無事なようだ。


だが全員の数を数えても、残っているのは十六名で、最初の人数から半分以上がいなくなっていた。



「おい雄治。どうだ?ケガは大丈夫そうか?」



野村どのは雄治に近づくと、片膝をついて様子を窺う。



「駒四郎……助かったよ。ありがとな」



雄治が微かに笑って答えると、野村どのは安心したのか、ニカッと笑って立ち上がった。



「まったくチビどもが!世話が焼けるったらないぜ!」



いつもの歯に衣着せない物の言い様に、今回だけは雄治も苦笑するしかなかった。



「さて、これからどうする」



野村どのが指示を仰ぐように、篠田どのを見る。


篠田どのも決めかねているようだ。
黙ったまま、難しい顔をしている。


俺も他の隊士達も、ここらは街道を下りるしか道は知らなかった。


だが、街道はすでに敵軍に占領されている。


きっと……城下にもすでに敵が侵入していることだろう。



俺達にはもう、城へ戻る(すべ)はないのか。
何とか山を下りる手立てはないものか……。



あとは山中の道なき道を、手探りで下りて行くしかない。


だがそれには時間もかかるだろうし、負傷した者達には苦しいものになるだろう。


早く城に着いて、雄治の傷にきちんとした手当てを施してやりたいのに。






「……そうだ!」



一同が悩んでいると、突然 希望を見出だしたかのように、西川どのが声をあげた。



「さっきの不動滝を降りよう!そこからもう少し下れば弁天洞(べんてんどう)があるはずだ!その洞門をくぐろう!

そこなら敵に見つかる心配もなく、弁天山(飯盛山の別称)の西表に出られる!

城下がどうなったかも、そこから見えるはずだ!」



その言葉に、一同の表情は希望と不安が入り混じるものになった。



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