この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
一度だけ まぶたを閉じる。
その裏にはいつも、ゆきの笑顔が映っていた。
――――ゆき。許してくれ。
お前の大切な男の命を、俺が奪ってしまうことを。
俺も 一緒に逝くから。
あの世へ行っても、お前の代わりにそばにいると誓うから。
まぶたを開く。
苦楽をともにした親友の顔を、目に焼きつけるようにまっすぐ見つめる。
「……雄治。黄泉の国でも友でいような。
今度 生まれくる時も、また 友になろう。
そうやって ずっと、俺の親友でいてくれ」
雄治は弱く笑う。「当たり前だ」 と。
俺も笑った。
そして一度深く深呼吸をすると、合図を待つ雄治に強く言った。
「―――いいぞ、刺せ!!」
小刀を持つ雄治の両腕が突き出されるのに反応して、俺も渾身の力を込めて、雄治の左胸に刃を突き刺した。
――――肉と骨の壁が、貫かれる感触。
「―――っ!?」
目の前で苦しそうに顔を歪める雄治が、薄く目を開け口角をあげた。
その胸から小刀を抜くと、血がいっきに溢れ出し、雄治はそのまま力なく俺に倒れ込んでくる。
「雄治……!! お前……っ!! なんで……っ!?」
受け止めた雄治の身体は、もう 動かない。
まぶたは固く閉じられている。
一滴の血もついていない小刀が、 その手から悲しく地面に落ちた。
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