この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


兄さまのお部屋を出ると、ふらりと庭に面した縁側まで行き、そこに腰掛けた。


………なんだか 気が抜けて、しばらくそこから動けずにいた。



――――つい 昨日のことなのに。



『もう 忘れた』。



利勝さまにとっては、すぐに忘れておしまいになるような、ほんの些細な出来事だったのかもしれない。


けれど……私にとっては。


心細くて泣きたい時に、ふっと現れて助けてくれた。


それが とても ありがたくて。



何かお礼がしたくてたまらないのに、もう関わりあいたくないと言わんばかりの『気に病むな』の言葉。

足が悪いのも、さほど 気に止めることもなく。



利勝さまはきっと、私なんかにひとかけらの興味もないのだわ………。



 
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