この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
―――私達はあれから、お城を出立するお殿さまと、利勝さま・兄さまを含む白虎士中二番隊の皆さまを見送ったあと、
ごくわずかな食糧と家系図、そして身の回りの荷物を包んで、避難する町人達に紛れるようにして急いで屋敷をあとにした。
向かったのは、まつの嫁ぎ先。
それはお殿さまや白虎士中二番隊が向かわれた滝沢本陣の近くで、弁天山のふもとにある滝沢村牛ケ墓というところだった。
そこの肝煎の家に嫁いだまつは、私達を連れて家に戻るなり、まず私と母さまの身なりを農民の姿に変えた。
「武家の者だと知れたら、敵兵に何をされるかわかりません。
申し訳ありませんが、私どもと同じように真似て下さりませ」
兄さまからそう指示され、早くから準備していたのか、まつは実に手際よく私達を村人と同じように仕立ててくれた。
母さまは顔を汚すことに抵抗があるそぶりを見せておられたのだけれど、まつに説得されて、しぶしぶお顔に泥を塗りました。
色白の顔や汚れていない爪は不審がられるからと。
「奥方さまとゆきさまは私どもの親戚で、戦禍から逃れてきたことにしておいて下さい。
ここには戦で村を焼かれた人達も逃げてきております。
その者達の恨みを買うこともありましょうから、身分はけして村人にも明かさないで下さい。
奥方さまとゆきさまの事を存じ上げているのは、私ども家族だけです。よろしいですね?」
まつに強く言われ、母さまと私は頷いた。
そしてそれが済むと、村が敵の進軍してくる街道近くにあるため、私達はまつの家族の者達と数名の村人達とともに、敵が攻め込んでくる前にと、戦禍を免れるため、再び家をあとにした。
そうして山の奥深くの岩屋に避難してきたのだ。
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