この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


白虎士中二番隊が、戦場へ援軍に向かったと聞いたのは、混乱する城下から抜け出し、滝沢村に着いた時だった。



滝沢本陣では十六橋を敵軍に押さえられ、援軍の要請が何度もあったという。



そのため、お殿さまの護衛として出陣していた白虎士中二番隊が、急遽 戸ノ口原へ向かったようだと、まつの家に報告にきた村人が言っていた。



私はそれをつぎはぎだらけの粗末な着物と、百姓の娘がはくという猿袴(さっぱかま)に着替えながら聞いていた。





………利勝さま。





とうとう 戦場へ向かう時が来られたのですね。



利勝さまの願いが 叶う時が。



そして それは、もう利勝さまに会えないことを意味していた。





―――静かに 目を閉じる。





覚悟していたことでしょう?

いまさら、動揺などしない。



私は、利勝さまとの約束のためにここにいるのだから。



そうでなければ、とうに自宅で母さまに従い、自害して果てていた。



今、私が生きているのは、利勝さまの願いを果たすため。



―――約束したもの。



利勝さまを探して、そのお身体から形見になるものを受け取るの。

そして お城にいるだろうくら子さまに、利勝さまの最後を伝えるの。



『利勝さまらしい、ご立派なお最期でした』



そう(たた)えて、くら子さまに喜んでもらうの。



必ず やり遂げますから。



だから すべて終えたら、

あなたのあとを追いかけてもよろしいですよね……?




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