この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
それから私達は、その場でさらに三晩を過ごした。
砲声は絶えず聞こえてくる。
それこそ昼夜問わずに、城下の方角から爆音が轟く。
私達はその音に、市街戦の繰り広げられる城下の悲惨な光景を思い浮かべながら、不安な時間をただ過ごすしかなかった。
そんな中で唯一救われるのは、吾郎ちゃんの笑顔。
何も知らないこの子の無邪気な姿は、緊張する皆の表情を緩めてくれ、私の折れそうな心を保たせてくれる。
吾郎ちゃんの小さな身体を抱き寄せると、柔らかくてあたたかい。そのあたたかさが、安心感を与えてくれる。
以前まつが文を寄こして、吾郎ちゃんの誕生を報せてくれたとき、兄さまは本当にうれしそうだった。
「よかった。まつは幸せそうだ」と、まるで甥子ができたように、吾郎ちゃんの誕生を心から喜んでた。
そんな吾郎ちゃんは私の膝上から降りると、今度は母さまによじ登り、その腕に抱かれてキャッキャッと喜んでいる。
なかなか甘え上手さんだ。
吾郎ちゃんの姿に目を細めて眺めていると、村の様子を見に行っていた、まつの旦那さんの弥平太さんが戻ってきた。
「敵兵はあらかた城下へ移ったようだぞ。もう村に戻っても大丈夫だろう」
その言葉を受けて、村人達はホッと安堵の息をつく。
私と母さまは、不安な表情のまま顔を見合わせた。
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