この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


けれどもまつのお姑さんにあたるおさきさんは、にっこりと笑って手を叩いた。



「さあさ、皆 疲れているでしょうが、もうひとふんばりして家を直しましょう!」



こんな状況の中で明るい笑顔を見せるおさきさんに、驚きと尊敬と、そして感謝の念を込めた視線を向ける。



「家族が誰ひとり欠けることなく、家も焼かれなくてすんだ。それだけで十分よ」



そう言って、家の者を束ねる家長の妻として、毅然とした態度で指示を出すおさきさんの姿は、武家の妻女のそれと少しも変わらない。


強い女性の姿だった。





「ゆきさまは、吾郎の相手をしていて下さりますか?
こちらのほうは、私どもで片づけますから」



まつは吾郎ちゃんを渡そうとする。
でも 私はそれを断った。



「吾郎ちゃんは母さまに。私は片づけを手伝うわ。
何でもいいから用事を言いつけて?」

「ゆきさま……」



まつが柔らかく目を細める。
私の気持ちを汲んでくれたようだった。



「でしたら、座敷のほうをお願いしてもよろしいですか?私は台所を片づけますので」

「わかったわ」



気落ちしてばかりではいられない。

利勝さまや兄さまの安否ばかり考えてはいけない。



皆がこのつらい状況に、必死で耐えてる。



私も。私も今、自分のできることをしよう。




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