この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 






………利勝さま。







まるで 悪い夢でも見ているようです。



あなたがもう 怒ってくれないなんて。

あなたがもう 笑ってくれないなんて。





ひどいです。利勝さま。



私 言ったじゃないですか。



万が一 戦いでお命を拾うことが出来たら、それを恥と思わず大切になさって下さいと。



なのに どうしてご自害など?

私には自害することを止めておきながら。





………利勝さま。私は。





たとえ重傷を負っていたとしても、ご自分からお命を絶つことだけはしてほしくなかった。



なにがなんでも、生きて帰ってきてほしかった。





頭ではわかっているの。



私の考え方は、武家のそれとは違い、恥ずべきものであると。



あなたの潔い最期は、武門の鑑たるものとして、称えられる行動だと。





けれども私は思ってしまう。





利勝さまや兄さまが、弥平太さんと同じ考えであったならと。



大切な人が、片時も離れずそばにいてくれる。

そんな恵まれたまつを、どれだけ羨ましいと思ったか。



けれども私は武家の娘。



どんなに悔しくても、どんなに悲しくても。



利勝さまの死を、兄さまの死を。



とてもご立派でしたと誇らしく思い、喜ばなくてはならないのですね………。





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