この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


まつが静かに立ち上がって部屋を出ると、風呂敷に包んだものを抱えて戻ってきた。



細長い長方形に包まれたそれは、外から容易に中身が解らぬよう、布か何かにくるまれて、分厚くきっちりと縛られていた。



それを私の前に置くと、まつは風呂敷の包みを解く。



見せられたのは、小刀が二振り。



言われなくてもわかる。

これは兄さまと利勝さまのもの。



弥平太さんがすまなそうに口を開く。



「申し訳ございません……。おふたりさまのご遺品は、これしか持ち帰ることができませんでした」



まつも言い添えた。



「ご遺体を運ぶ時には、すでに刀などのものは物取りに盗られてしまい、ゆきさまを背負ってきたとき一緒に持ち帰ったこの脇差しだけが、唯一のものになってしまいました」



ふたりの話を聞きながら、それをじっと見つめる。

私には鞘しか見つけられなかった利勝さまの小刀は、きちんと刀身が納められた状態で遺されていた。



「利勝さまの小刀は、どこに……?」



答えは、なんとなくわかっていた。

それでも目で訊ねると、まつはその視線を受け止めて、私の考えを肯定するかのように頷いた。



「八十治さまの手に握られておりました。ご自害される時に、お互いのお刀を交換なされたのか、差し違えた刀をご自身で抜かれて、そのまま亡くなられたのか……」



まつもおふたりの死に際を思い、表情を暗くする。



利勝さまや兄さま、皆さまがたが、どのように死んでゆかれたのかは誰にもわからない。



私達には その死に様から、想像することしかできない。




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