この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
結局この日は、日暮れまで御門近くで待ち続けましたが、とうとうくら子さまとさき子さまを見つけることは叶いませんでした。
それでも次の日も、朝早くから私とまつは、再びお城の御門前に立ちました。
御門前は昨日と同じで、大勢の人々でごった返しております。
なかなかそのお姿を見つけられないことに、もしやおふたりは籠城のおりに亡くなられたのではと、胸を覆う不安を何度も何度も払い退けようとしました。
それでも残るわだかまりを胸に、お城から出てくる人におふたりの安否を尋ねながら、祈る思いで待ちました。
(きっと大丈夫。きっと利勝さまが、おふたりにめぐり逢わせてくれる……)
そうして、その日の午後も過ぎたころ―――。
祈りが通じたのか、御門を出てくるくら子さまとさき子さまのお姿を、ようやく見つけることができたのでした。
「……くら子さま!! さき子さま!!」
悄然と足を運ぶ、おいたわしいお姿に胸が詰まりながらも、おふたりに逢えたことに涙を浮かべて喜ぶ。
昨日のお父上さまの時と同じに、跛をひきながらもおふたりに近づいてゆく。
「……おゆきちゃん!!」
私に気づいたおふたりも、そっくりな大きな目を真ん丸にして驚き、さき子さまはこちらに向かい、駆け寄ってきてくれた。
私達は手を取り合った。
「おゆきちゃん!生きていたのね!」
そう言われると、なんだか生きていたことが申し訳なく思えて、つい 俯いてしまう。
「……はい。情けないことに、おめおめと生き延びてまいりました……」
しょげて目を伏せる私に、さき子さまは取り合った手をポンと叩き、叱咤する。
「ばかね!生きていてよかったって言ってるの!それにそれを言うなら私だってそうよ!
死ぬのは今日か明日かと待ち侘びている間に、この日を迎えてしまった……。
これからどうしていいものやらと、母上と途方に暮れていたところよ。情けないったらありゃしない」
さき子さまは、長らくご無沙汰していた友人に会えたかのような、懐かしい目で微笑む。
そんなおふたりのお顔も、お城を出てゆく人達と同じく煤だらけで、目は落ち窪んで疲れ果て、面差しがだいぶお窶れになっていた。
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