この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
思ってもみなかったことを言われて、今度こそ私の心は乱れる。
「そ…そんなはずはございません!利勝さまも“期待するだけムダだ”と申されましたし……!」
「それは自分が、死にゆく運命と覚悟を決めていたからでしょう?
本心はおゆきちゃんに惹かれていたはずよ。
だってあの子ったら、私のお友達がうちへ遊びに来て挨拶しても、頭を下げるだけで返事もしないのに、
おゆきちゃんが来た時ばかり、用もないのに顔を出して悪口をたたくんだから、すぐにわかったわよ。
ああ あの子は、おゆきちゃんが好きなのね―――って」
――――うそ。だって私は。
利勝さまがくれる優しさは、友人の妹に慕われて無下にもできず、根負けして与えてくれるものだと思ってた。
それなら、私の想いを受け入れてくれた晩。
つないだ手で伝えあった想いは、同じだったのですか……?
利勝さまの手を握りしめ、『好きです』と 想いを送った私に、
握り返してくれたあなたは、『俺もだ』と 伝えてくれていたのですか……?
知りたい。もう一度会って確かめたい。
あなたが私を、少しでも好きでいてくれたのか。
けれど 答えを聞くことはできない。
あなたは 逝ってしまったのだから。
利勝さま。
「利勝さまぁ……っ!!」
新しい涙が、目のふちから溢れ出す。
胸の中に再び甘い温かさが灯り、それが全身に行き渡るように広がってゆく。
私の心に灯る、無数の光り。
いつだって、あなたが灯してくれる あたたかな光り。
――――いいえ。もうわかっているの。
この温かさは、あなただけが与えてくれるものじゃないって。
私に手を差し延べてくれる、すべての人達が与えてくれるものだって。
兄さま。お父上さま 母さま。
それにまつとまつの家族。
くら子さまにさき子さま。
私を見守り、時に優しくそして厳しく、励まし助けてくれる人達がそばにいてくれたから。
だからこそ 一度消えた私の心に、再び温かなともしびが灯るの。
きっと今までもそう。
私が一途に利勝さまのことだけを想ってこれたのも、そんな恵まれた環境の中にいたからこそ。
私もそんなふうになりたい。
今度は私が、誰かの心を照らせるように。
私も、光りを与えられる人になりたい。
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