この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
母さまは、にっこり笑っておっしゃった。
「行ってきなさい。ただし、無理をしてはダメよ。困った時は、まわりの人に助けてもらいなさい。そうやって、皆 大人になってゆくのだから。
お前にとっても、きっと良い勉強になるでしょう」
強く頷いて下さるのを、私は満面の笑みで返す。
「母さま……!ありがとうございます!!」
お許しをもらえたことにうれしくなって、縫っていた巾着を片づけるとすぐ立ち上がった。
「どこかいく当てはあるの?せめてどちらの方向へ行くのか教えてちょうだい?
八十治さんが戻ってきたあとで、聞かれると困るから」
母さまは少し不安な表情を浮かべて、背中を向けた私に声をかける。
――――少し 迷ったけど。
母さまには、嘘をつきたくないから。
「……厩町のほうへ。あの日 道に迷った私を助けて下さったお方に、どうしてもお礼を申し上げたいのです」
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