この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


―――考えてみれば。

あの日私は、楠さまのお屋敷から出たあと、道に迷ったすえにあの大松の下に行き着いたんだっけ。

利勝さまの後をついていったおりも、最初のうちは追いつくのに必死で、まわりの景色がどんなだったかまったく見ていなかった。



ここはどこ?



田圃のほうを目指していたはずなのに。

私はいつのまにか、商店が軒を連ねる賑やかな場所に来ていた。



(……なんで?なんでこんなところに出るの?)



田圃を目指そうと、あわててくるりと踵を返し、再び足を踏み出したとき。

なぜか左足に、違和感を感じた。

感じるはずのない、左足。

だって私の左足は、膝から下は石のように固くて、何も感じたりしないはずなのに。

足元を見てみる。左の下駄の鼻緒が切れていた。

感覚のない足だから、鼻緒が切れたことも気づかずに、足に絡みついた下駄ごと引きずっていたらしい。


< 50 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop