この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
女の子は目の前で膝を折ると、血だらけの左足から、絡みついた下駄を外してくれた。
「痛そう……」
女の子の表情が曇る。
「あ、あの…大丈夫です。心配なさらないで下さい。痛みはまったく感じませんので……」
恐縮して私が言うと、
「痛みを感じない?」
女の子は私を見て、目をしばたいた。
それから私の足先が、石のように固く動かないことに気づく。
「あなたの足……」
「そう。生まれつき、膝から下は動かないし、触れても何も感じないの。だから平気です」
苦笑する私に、女の子はくりっとした瞳に戸惑いの色を見せた。
場を取り繕おうと、言葉を探していると。
「―――さき子!」
遠くからの呼び声。
女の子が反応して、振り返って立ち上がる。
私も声のするほうへ顔を向けると、母親らしいご婦人が、こちらに駆けてくるところだった。
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