この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


「ここです!母上!」



さき子と呼ばれた女の子は、自分を示すように母親に手を振った。
それを認めて、ご婦人の顔は安堵で緩む。

女の子と同じく長身で、手に抱えた(ざる)には野菜がいくつか乗っていた。
近くで野菜を買っていたのかもしれない。

ご婦人は女の子の前まで来ると、呆れたようにため息を落とした。



「まったく……。お前という娘は、目を離すとすぐにいなくなるのだから」

「ごめんなさい、母上。この子が足をケガして困ってるようだったから、気になってしまったの」

「ケガを?」



ご婦人が私を見る。私は畏縮して俯いた。

ご婦人は、私の左足に視線を落として眉をひそめた。



「これじゃあ歩けないわね。別の履物を用意しないと。さき子、お前の履物を貸してあげなさい。ひとりで家に戻れるかしら?」



毅然とした口調で娘に顔を向けると、女の子は元気に返答する。



「はい!もちろんです!」

「それから、こちらに来る時は末吉(すえきち)も一緒に連れてきなさい。荷車も忘れずにね」

「心得ました!」

「あ…っ!お待ち下さい!」



はりきって駆け出す女の子を、私はあわてて呼び止めようとするけれど。


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