この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
引き止めようと伸ばした私の手を、ご婦人が制するようにやんわりと握った。
「大丈夫よ。あの子はここらへんに詳しいの。家もそう遠くはないのよ」
私を安心させるように、にっこりと微笑む。
「ですが……!」
「いいのよ」
畏縮する私を気にせず、さっきの女の子がしてくれたように、ご婦人は目の前でかがみ込んだ。
それから袖口から手ぬぐいを取り出すと、それを細く裂いて、傷だらけの左の足指に巻いてくれた。
「……ありがとうございます」
お礼を述べると、笑顔で返してくれる。
目元があの女の子とよく似ていた。
「あなたの足では、草鞋のほうが良かったかもしれないわね。
ほら、草鞋の紐を足首に縛りつけておけば、擦れて傷つくこともないでしょう?」
手ぬぐいを巻いた時に、足が動かないのに気づいたのか、萎縮して丸まる足指にそれと察したのか、ご婦人はそうおっしゃる。
器用に手拭いを足指に巻きつけ終わると、ご婦人に尋ねられた。
「ここへは誰と来たの?」
「……ひとりです。道に迷ってしまって……」
「まあ、そう。それではきっと、親御さんは心配なさるわね」
………それを言われると、なんだか叱られたような気がして、私はしょんぼりとうなだれた。
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