この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


助け舟を出してくれたのは、くら子さまだった。

くら子さまは、私達のそばまで来てくれて兄妹仲をとりなして下さった。



「まあまあ!八十治どの!よくおいで下さいましたわ!
今ね、雄治におゆきさんを送らせるところだったの。

おゆきさんは早く帰りたがっていたのだけれど、私達が長々と引き止めてしまったの。

本当に申し訳ないことをしてしまったわ。
母君もさぞやご心配されたでしょう」



兄さまはくら子さまに身体ごと向き直ると、礼儀正しく頭を下げてから、きびきびとした口調で答えた。



「いえ、悪いのはこちらです。長々とお邪魔させていただき、大変お世話になりました。

妹は私が連れて帰ります。お礼はまた、母が後日改めて伺いますので」


「そう?ならふたりとも、またいつでもいらしてね。お待ちしているわ」


「はい!また来ます」



くら子さまの柔らかな口調と微笑みに、兄さまも先程のご自分の行いが恥ずかしかったのか、照れたように頬を緩める。



「……助かった」



ボソリと、利勝さまのつぶやきが聞こえた。



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