この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
兄さまは今度は利勝さまに向き直ると、軽く頭を下げた。
「迷惑をかけたな。あの件はもう済んだと、妹にもちゃんと言い聞かせたつもりだったんだが」
謝られた利勝さまは、腕組みして再度ため息を漏らす。
「まったくだぜ。でも以外だったな。いつも冷静なお前が、妹のことでこんなに取り乱すなんてさ」
言われて兄さまは、しかめた顔を赤くする。
「見た通りの妹だからな。兄は苦労するんだ」
「ああ。まるで糸の切れた凧みたいだ」
利勝さまは横目で私を見ると、少し頬を緩め鼻で笑った。
(………あ。笑った………)
初めて見る、利勝さまの笑顔。
利勝さまの笑顔なんて、まったく想像できなかったけれど。
そうなんだ。
利勝さまはこんなふうに笑われるんだ………。
「母上!用事は済んだようなので、私は出かけてきます!」
私から解放された利勝さまは、くら子さまにそう告げると、せいせいしたように両腕を伸ばして門を出た。
兄さまも私を促す。
「俺達も行こう。足は大丈夫か?」
「はい」
いくらか冷静さを取り戻したのか、兄さまは私の足を気づかってくれる。
私達はそろって、くら子さまに再度深々と頭を下げると、利勝さまに続き門を出た。
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