この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


ながせ ゆうじ。



利勝なんて名じゃなかった。

私やっぱり、嘘をつかれてた………。



涙が出そうだった。



「……どうしてですか?どうして……雄治さまは 私に、利勝なんて名乗ったのでしょうか?」

「……さあな」



兄さまは目を伏せて、素っ気なくつぶやく。



――――答えをくれなくてもわかる。

あの方はきっと、まわりに知られたくなかったんだわ。

本当の名を言えば、私が兄さまに話してしまい、事が大きくなると思って。

だから偽りの名を。



(利勝さまは知らないんだ)



あのとき私が、どれだけ心細かったか。

声をかけてもらえて、怖かったけど、どれだけ安心したか。

どれだけ感謝したか。



利勝さまにとっては、取るに足らないことだから。

きっとそんなに騒ぎ立ててほしくはなかったんだろう。



……結果的には、私のせいで、そうなってしまったのだけれど。


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