青空バスケ―2nd―
「……何かメッチャ疲れた」
「嵐みたいだったね。
あの人」
その日の帰り道。
俺と栞奈は並んで歩いていて……俺はグダッとしていた。
「でも、チワワちゃんは納得いかないな。
あたし、もっと大きいもん」
……多分身長のことだけを言ってるわけじゃないと思うけど。
「栞奈」
「ん?」
栞奈がこっちを向く。
俺の方が背が高いから、自然と上を向く形になる。
……ほら。
まんまチワワに見上げられてるみたいだ。
そっくりなんだよ、チワワに。
「チワワって可愛いだろ?」
「うん。可愛いよね。
あたし、好きだよ」
「だから、アイツはお前が可愛いって言ってたの。
分かる?」
……すると、栞奈は何か思い付いたような顔をして俺の方を見た。
「でも……大和もたまに言うよね。
チワワみたいって……」
「っ………それは……」
……いつもは鈍いクセに、こういうとこはよく突いてくるんだよな。
本当……困る。
けど………
「……俺も思ってるよ。
お前が可愛いって……ずっと前から」
お前のことを一番よく分かってるのは俺だ。
小さい頃からずっと一緒にいて……どんなことでも知ってる。
その表情も……全部。
栞奈は真っ赤な顔をして俺から目をそらした。
「……そういうとこも可愛いよ」
「大和にそんなこと言われたのなんて……あんまりないもん」
「言わせたのは栞奈じゃん」
「……イジワル」
照れ隠しのように下を向いた栞奈の頭を優しく撫でた。
すると、栞奈は真っ赤な顔を上げて俺の目をじっと見つめた。
「……今日はもうちょっと大和と一緒にいていい?」
「………え?」
「……離れたくない」
……珍しい栞奈のワガママ。
……俺の心臓が持たなくなりそうだ。
「……じゃあ、家来る?」
別に家に行ったって特に何をするわけでもないけど。
ただ……一緒にいたいだけ。
「……うん」
ゆっくり頷いた栞奈の手を握り……二人並んで家路を歩いた――