青空バスケ―2nd―
「生まれてからずっと大和のそばにいて。
いつも大和に振り回されて。
……バスケを始めてからもずっと大和のそばでサポートしてくれてたのは栞奈だろ」
「……………」
「大和は……そんな栞奈に一度でも感謝したことがあるのか?」
「それは……」
「心の中で思ってるだけじゃダメなんだよ。
ちゃんと言葉で伝えなきゃ」
……思えば、本当に栞奈はいつもそばにいてくれた。
暁弥と仲違いした時も、中三の春に俺が部活に顔を出さなくなった時も……。
俺が辛い思いをしていた時は……いつもそばにいてくれた。
でも、俺はそんな栞奈に感謝したことなんて……一度もない。
心の中ではもちろん思ってるよ。
でも、言葉で表したことは……ない。
「栞奈がマネージャーとしての自信を失ったのだって……全部そういうことの積み重ねなんじゃないか?」
「っ……………」
「少しはそばにいてくれる人のありがたみを感じるべきだな」
……ハル兄の言葉は重たくずっしりと俺の心に響いた。
……俺は何も答えずにリビングを出た。
ハル兄はそんな俺の背中をじっと見つめていた――
大和が出て行ったあとのリビング。
一人になった陽斗のところへ、ひょっこり大和の兄の稜が現れた。
「ハル兄も世話焼きだね~。
大和に説教するためにわざわざ家に来るなんて」
「稜、お前いつの間に……。
……でも、何かほっとけないんだよな。
大和って」
「ハル兄に似てるからじゃねぇの?
バスケ馬鹿なとことか」
「……そうかもな」
「でも、まぁ……ハル兄の気持ちはアイツに伝わったと思うよ。
今の、ハル兄の経験談だろ?
七海さんと離れた時の」
「……あの時は、まさか離れるなんて思ってなかったからな。
だから……大和には今そばにいる人の大切さを知ってほしい」
陽斗は大和が出て行ったリビングのドアの方を見ながら……優しく微笑んだ。