ぬくもりをもう一度
「あ、いや。無理だったら、

 また別の日に……」


「うん、いいよ。

 亨くんの声聴いてたら、

 私もすぐに

 逢いたくなっちゃったから」


そう言ってころころと笑う香澄の声が、

無性に愛しく感じる。


「九段下まで来れるか?」


「うん、大丈夫」


「じゃあ、6時に九段下駅で」


うん、という軽やかな返事を

聞いて電話を切る。


多少の罪悪感を感じつつも、

それ以上に俺の心は

ふわふわと浮ついていた。






< 140 / 297 >

この作品をシェア

pagetop