ぬくもりをもう一度
外はすっかり冷え込んでいて、

吹く風が一層俺たちを小さくさせる。


ふと隣に目をやると、

香澄が細くて綺麗な手をさすりながら

ふうふうと息を吹きかけていた。


その何気ない仕草が、

胸を無条件に高ぶらせる。


数秒ほどそんな姿を見てから、

俺はその手をすっと取り

そのまま上着のポケットへしまった。


「!」


俺の行動に、香澄の目が大きく見開く。


言葉を失ったまま固まる香澄に、

精一杯の微笑みを投げかけた。






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